2010年10月3日日曜日

♯214 「俺俺」星野智幸(文学)




あらすじ

「なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった俺は、
気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、
俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎてもう何が何だかわからない。
電源オフだ、オフ。壊れちまう。
増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて――。
現代社会で個人が生きる意味を突きつける衝撃的問題作!」


つくづく表現者、と言われる人に嫉妬する。
そしてこの星野氏のまた表現に、嫉妬する。

俺がいて、俺がいる。
それはまさに俺であり、つまりは俺以外の何者でもない。

社会全体を見渡した時、混迷極める人間関係。
その上で、中で、もしくは外で、生じる己のブレ。
自己は他者と同化しつつも、それすらも自己であるが、
そんな境界線は実のところ希薄。

たたみかける俺地獄。
現実と虚構の狭間。
一体今の自分はどこにいるのだろう。

その問いは、パッと開き、フィナーレに流し込まれる。
その問いをまず持つことが大事だ。
救世主は他者であり、己である。
どちらも欠けてはいけない大事なピースである。

感動と嘆息に覆われ、
ハッとした爽快感とともに、
一歩踏み出すことのできる素晴らしい作品でした。

新潮社 星野智幸「俺俺」





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