2012年1月5日木曜日

♯277 恋の罪(映画)


2011年 日本
監督 園子温
出演 水野美紀、冨樫真ほか


あらすじ

どしゃぶりの雨が降りしきる中、
ラブホテル街のアパートで女の死体が発見される。
事件担当する女刑事・和子(水野美紀)は、
仕事と幸せな家庭を持つにもかかわらず、
愛人との関係を断てないでいた。
謎の猟奇殺人事件を追ううちに、
大学のエリート助教授・美津子(冨樫真)と、
人気小説家を夫に持つ清楚で献身的な主婦・いずみ(神楽坂恵)
の驚くべき秘密に触れ引き込まれていく和子。
事件の裏に浮かび上がる真実とは……。
3人の女たちの行き着く果て、
誰も観たことのない愛の地獄が始まる……。」




 ということです。
今や作品出すたび注目の園子温監督。

 前作「冷たい熱帯魚」での圧倒ぶりから、
期待値あがりまくりの本作でした。


 潔癖とも思える夫を持ついずみ。
献身的という表現は極限的とも言える。

「久しぶりに僕のチンチン触ってみるか?」
「いいんですか?」
「どうだ?」
「嬉しいです!」

 夫婦の交わりはこれ以上はない。
何かしたい!そんないずみはパートを始める。
そしてひょんな誘いから騙し騙され、
ヌードを撮られ、絡んだ男と寝る。

 何かが吹っ切れたかのように、
いや、吹っ切るように、家に戻り、
一人鏡の前に素っ裸で立ち、

「いらっしゃいませ!試食いかがですか?
おいしいですよ!」

とパートで発するセリフを連呼する。
延々と、連呼する。
声のボリュームがどんどん上がる。

この過剰なまでの繰り返し連呼シーンは、
何と、現場での監督とのアドリブだそうだ。
いやぁ、恐れ入る。。。

 渋谷円山町で一人の女性と出会う。
その女が美律子である。

 普段は大学で教鞭をとる美律子は、
夜は男からお金をとって体を許しているのだ。
金に困っているわけでもない。
ただ愛を求めて、愛の「意味」を求めてさまよっているのだ。

 いずみと美律子は愛を求めるという意味で、
同じ括りにあるとされる。

 和子が最初に立ち入った事件現場には、
「城」という文字が残されている。

 この「城」とはつまり迷宮的な意味合いを持つ。
つまり愛というものの意味を追うその行為は、
城の周りをグルグルまわっているだけなのだ、と。

 愛とは?
そのためにどんどん自己を貶める女たち。

 
 田村隆一の詩が本作を照らし続ける。

「言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかにたちどまる」

 言葉とその意味というものが無ければ、
「愛」というものに悩むことなどなかった。

 その意味を追い、
どこまでも馬鹿正直に追い続け、
体を交え、声高らかにセックスし、
その先にあるものは・・・。


 迫真という言葉だけでは物足りない。
各俳優の限界を突破した演技なくして、
本作は成立し得ない。

 エンターテイメントであり、詩的であった。
160分という時間がとても短く感じた。
最高にスリリングな本作、確実にオススメです。


言葉なんかおぼえるんじゃなかった


予告編


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